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ありがとう
口の中にほんのり甘い味が広がる。 もう一口食べてみる。 甘く、優しい味だ。
昨日、菓子を貰った。
―――もしかしたら、甘いものは食べないかもしれないけど、ほんの気持ちだから・・・
そう言って、彼女は紫苑色の紙で包まれたものを私に差し出した。 突然のことに訳が分からないでいると、彼女は少し頬を染めて言葉を付け加えた。
―――その・・・いつも守ってくれてる・・・お礼。
お礼・・・? 私は臣下として当然のことをしているまでなのに。 主が臣下にお礼など・・・。しかも手作りで菓子を振舞いうなど・・・。 本当にあの方は・・・。
しかし、何だろう。 この心がくすぐられるような、ほんのり温かい気持ちは。
そう、まるでこの菓子のように 甘く、優しく 彼女の言葉が心に染み渡る。 甘く、優しく 嬉しさがこみ上げる。
感謝しなければならないのは私の方だ。 だからこそ私は・・・・・・・
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