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ありがとう(花)


目の前に一輪の花。

私は、それからずっと目が離せないでいる。

その花を見て、
昼間の情景を何度も何度も頭に巡らす。

いつもちょっと無口で控えめなあの人が、
私の手をとって、その手にこの可憐な花を乗せてくれた。

―――私には、どのようにして女性を喜ばせたら良いのか分からず・・・これしか・・・。

―――その、この前戴きました菓子のお礼になればと・・・。

そう、たどたどしく話す彼を思い出すと、思わず口元が緩んじゃう。

あれはいつも守ってくれてるお礼だっていったのに。
頼久さんたら、臣下として当然のことですから・・・って。

―――こんなものしか用意できず、申し訳ありません。

そう彼は恐縮してたけど、
すごく嬉しい。

頼久さんが、してくれることは全部嬉しいの。

いつも
ありがとね。

 

 

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