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「想い」(あかね)
今までこんな想いしたことなかった・・・・
私はついこの間まで普通に女子高生だった。 毎日学校へ通って、勉強して、友達と遊んで・・・ 特に悩みもなくて、平和に楽しく心穏やかに過ごしてきた。
それが突然、全く知らない世界にとばされて・・・ 今は“龍神の神子”というものになってしまった。 龍神の神子に仕えるという藤姫やその住まいである左大臣の屋敷に住む人たち、そして、私を守ってくれる八葉という人たちは、私を龍神の神子として特別な存在として接してくる。それも敬うかのように。 ―――龍神の神子。 私にはよく分からない。 だってこの前まで、ううん、今だって私は普通に何の変哲もない単なる16歳の女の子なんだから。
全てが突然。
普通に平凡に暮らしてきた私には大きな衝撃だった。 環境の変化も、心の変化も。
そう、普段特別な心配もなく恵まれて平和に暮らしてきた私にも、 こんなに一人の人の存在を強く願ったり、その人の生死におびえたりする気持ちが訪れるなんて。
こんなにも強く心が動かされ、心が大きく締め付けられるかのような感覚は初めてなの。
今までは、力があるとかないとか、そんなことなんてこれっぽっちも考えたことなかった。 龍神の神子だと言われても、私には、力だって知識だって、そんなものない、と思う。 それでも、力が欲しいと初めて思えた。
あの人を守る力を。
気づいたら、目はいつもあの人の姿を捉えている。 そして、いつもあの人の姿を探してしまう。 あの人の姿を見ると、いつも心地よい緊張感が体中を駆け巡る。 心臓はドキドキして、胸が締め付けられる。 目が合うと、彼のその切れ長の目、そして紫苑色のに魅せられて なぜか泣きそうになる。 触れたいと思ってしまう。
寡黙な彼の姿。その大きな背中はいつも私の前に立ちはばかって、私を守ってくれる。 それに喜び、同時にその身をひどく心配してしまう。
私が不安になってしまったり、落ち込んだりしたときに浮かぶのは、いつも彼の姿で、 その存在に安心する。
わたしは一体どうしてしまったの? こんな気持ちは初めてで、どうしたらいいのかわからない。 私に一体、何ができるだろう。 あの人のために一体何ができるだろう。
<終>
----------------------------------------------------------------------- あかねの独白です。恋する混乱を書いてみたくて・・・・。あかねが頼久を想う、っていくか気になる気持ちなんですが、頼久の名前も出てきてない・・・・。 読んでくださった方ありがとうぎざいました。(あすか)
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